大判例

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東京高等裁判所 昭和38年(う)255号 判決

被告人 田村敏男

〔抄 録〕

第二、量刑不当の論旨について、

所論に徴し本件記録並びに原裁判所及び当裁判所が取り調べた証拠について原判決の科刑の当否を検討してみる。さて、被告人が長尺のコンクリートパイルを積載して大型けん引自動車を運転し、本件の如く列車との衝突の危険が甚だ高い原判示中新田踏切を通過するについてこの列車との衝突事故を防止するについて、右踏切通過前及び通過にかかつていた当時において見るべき注意を払つたことの認められない本件において、被告人の不注意の強く糺弾されるべきは勿論であり、本件事故の結果が人の死、傷を招いたのみでなく、物的にもかくも莫大な被害をもたらし、加えて、鉄道による往来の危険を招来したことを考えれば被告人の責任は極めて重大であり、原判決の被告人に対する科刑は充分首肯できるものとしなければならない。然し、進んで考えてみるのに、本件の如く列車との衝突事故の当然予想される原判示踏切を長尺のコンクリートパイルを積載して大型けん引自動車により輸送するについては、被告人の使用者であつて事業の主体である原判示新潟運輸建設株式会社においても、誘導車をして誘導させ、自ら調査して列車通過について踏切通過の安全な時間を選び運送に当らせ、或は又事故の防止について運転者、誘導者に対し必要な注意を与え、その遵守について万全を期するよう充分の配慮が必要であつたのに、同会社においてはこれらの措置を講ずるについて遺憾な点が多く、本件輸送の責任を挙げて被告人らに負わしめたものと認められ、この点において被告人に対しかなり斟酌すべき事情があるものといえること、本件踏切通過にかかり前進、後退の切替操作に従事中の被告人としては論旨もいうとおり右踏切を通過し終ることに専念していたものであり、列車の到達に備え、踏切通過の安全を確認することはすべてこれを誘導者大沢虎男らに任せていたのが実情であり、右大沢においては被告人の期待に反し被告人の運転するけん引自動車の踏切通過を誘導するについて拙劣であつたばかりでなく、列車に対する安全確認、列車乗務員に対する危険の告知について多くの過誤を重ね、本件事故は右大沢のかかる行動に由来する面の多かつたことも無視できないこと(同人は本件事故後その責任の重大なことを痛感して自殺の途を選んでいる)、次に本件事故の根本的原因はこれ又弁護人の指摘する如く原判示鉄道給水塔の設置の場所が同所県道の往来の支障を来す関係にあり、これを通過するための県道の狭隘なことと、しかも該県道が下り勾配を伴う屈折となつていていよいよ大型車両の運行には困難な状況にあつて(しかも、当時水原方面より新潟に至る路線としてはこの悪条件を克服するより他に途がなかつた)、施設及び道路の状況の悪条件が重なつて本件事故を誘う原因となつていたこと、加えて本件事故による死、傷者に対する損害の賠償及び鉄橋の破壊等による物的損害の補償について被告人の雇主である新潟運輸建設株式会社と国鉄当局及び関係当事者間においてすべて示談を遂げ、損害賠償の関係だけはすべて解決していること等の諸事情を考えれば、原判決の被告人に対する科刑はやや重きに過ぎ不当なものと認めざるを得ない。

(三宅 井波 谷口正)

註 原審禁錮一年十月、罰金一万円 当審禁錮一年、罰金一万円

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